人間の受精卵を体外で育てる試験管ベビーや別の女性の子宮で育てる代理母、借り腹の技術も進歩しており、生殖革命とも言われている。日本では、代理母は行われていないが、アメリカなど海外に渡航し、そこで行う人はいる。母親の卵子を提供する場合や他人から卵子を提供してもらい、別の女性に産んでもらうなど様々なケースがある。体外受精は日本でも、女性が妊娠しにくい場合などの不妊治療の一つとして行われている。

遺伝子を組み換えるためには、先ず生物から抽出した遺伝子を制限酵素で処理して得た目的の遺伝子を含むDNA断片、または化学合成した遺伝子断片を用意する。その遺伝子の断片をベクター遺伝子に組み込んで新しい複合遺伝子にする。簡単に言うと、国鉄列車の長い青色車両を輪にしておいてその中に数個のオレンジ車両が入り込んだ形になるのだ。

この複合遺伝子を大腸、枯草菌、酵母、動植物細胞などの宿主細胞の中に適当な処理を施して挿入する。そしてこれらの遺伝子を挿入した細胞を大量に培養すると、新しいタンパク質が大量に産生されてくる。このようにして、もともと生物が微量しか作れなかった生理活性物質を、この培養液や菌体内から抽出することによって目的の産物を大量に得ることができるようになったのである。そして、このような遺伝子操作技術によって微量の生理活性物質が細菌の中に挿入された遺伝子から作り出され、今では細菌の作ったヒト成長ホルモン、ヒ卜インスリン、ヒトインターフェロンαとβ、B型肝炎ワクチンなどがよく使われるようになった。他にもヒ卜エリスロポエチン、ヒト上皮細胞成長因子、ヒトインターロイキンなどがあり、動植物や細菌類をも含めると数え切れないほど多くの物質が遺伝子組み換えによって生産されている。

遺伝子組み換え実験の安全基準は科学技術庁や文部省など六省庁に指針があり、安全のために必要な施設や実験手順などを規定しているが、罰則規定はなく安全管理は研究者自身に任されている。そこで吹田市は1994年10月に独自の厳しい規則内容を盛り込んだ「遺伝子組み換え施設に係わる環境安全の確保に関する条例」を作った。これは実験施設に対し廃棄物の種類、処理法、管理体制などについて市と安全協定を結ぶことを義務づけ、協定違反には市職員による立入り検査や事業者名の公表を盛り込んでいる。これは大阪バイオサイエンス研究所の発足時の住民への説明不十分によるとされているのだが、遺伝子組み換えはアメリカで始まってから約20年、世界的には規制が緩和される方向に進みつつある。現在では遺伝子組み換え技術を使って、人間の全遺伝子の塩基配列解析が世界的組織で行われているので、そう遠くない時期に私たちの遺伝子のどこが他人と違うかが分かったり、色々な病気が発病する時期までも予想されるようになると期待されている。