食事の時に誤ってほっぺたの裏や舌を噛んでしまった経験があるはずだが、血が出たりして痛くても、翌朝そこを舌で触ってみると、案外早く治っていることに気づいたことと思う。ロや胃の粘膜は1日~2日で傷を修復、腸粘膜では3~4日で修復される。 これは粘膜(口の中や胃の中の表面の抗胃液性粘膜細胞のこと)は、その奥の方から次第に表面に出て、表面の粘膜細胞は常に新しいのと取って替わっているからだ。口、胃及び腸の粘膜の表面細胞は次々に下から出てくる新しい細胞に押し出されてくる。従って消化管には、それらの脱落したものが入ってくる。体の外(皮膚)なら、脱落した細胞は垢となって取れていく。しかし、体内にある消化管では、その垢(脱落細胞)は、便と一緒に混ぜられる。便の1/3が、これによって占められている。便の残りの1/3が、食物のカスである。食物のカスの量が案外少ないようだが、脱落細胞にしても、腸内細菌にしても、元をただせば食物で、これが形を変えたものに過ぎない。便をよく観れば、健康状態が解る。便は食物のカスだけではなく、腸内細菌は、その人の免疫獲得に重要な役割を果たしているし、消化管は皮膚と同様に古くなると垢となって脱落する。消化管の表面にある粘膜細胞の寿命は、胃で1~2日、腸で3~4日といわれている。粘膜の奥から表面に向かって、次々と新しい細胞が移動してくるためです。十二指腸潰瘍が案外と早く治るのも、こういった理由による。