日本人の死因の上位を占めるガン、脳卒中、心臓病、高血圧、動脈硬化症、糖尿病、慢性の肝臓病や腎臓病などは、今まで成人病と呼ばれて、「ある程度の年齢になったら誰でも止む得ずかかる病気」というニュアンスが含まれていました。しかし、これらの病気はウイルス性の病気などと違って、それまで元気だったのに、ある日突然具合が悪くなってしまう、ということはほとんどありません。

食生活や運動、喫煙、飲酒、睡眠、ス卜レスへの対応など、間違った生活習慣を積み重ねて行く中で、病気の根がだんだんと広がり、ある時間が経過すると症状が出て来るものが多いのです。つまり中高年につきものの病気などではなく、自分の生活習慣が作る病気だというわけです。

また、これまでの成人病対策では、ガン、脳卒中、心臓病に対して、早期発見、早期治療という二次予防を最も重視してきました。しかし予防という観点から言えば、「病気にかからない習慣を身につける」ことこそが最も大切で現在は、その一次予防に力を入れて行こうという流れができつつあます。

自分の体に何か異常を感じた時、それを自己診断できるように解説して来たのが健康コラムの目標ですが、生活習慣病の場合は、病気の初期にはほとんど自覚症状がなく、気が付いた時には病気がかなり進行していた、というケースが少なくないのです。

ですから、毎日の生活における自分の習慣を見直すとともに、定期的な健康診断を積極的に活用して、自分の体の状態に常に気を配って置くことが大切になります。

高血圧は様々な合併症の引き金になっています。心臓から送り出される血液が、血管の壁に加える圧力が血圧です。心臓は収縮と拡張を繰り返して血液を全身に送り続けていますが、収縮した時の血圧を最大血圧(上の血圧)、拡張した時の血圧を最小血圧(下の血圧)と言います。

最大血圧130mgHg、最小血圧85mgHgがそれぞれ基準値です。

どちらか一方だけでも基準値を超えると高血圧と判定されます。高血圧の85~90% くらいが、原因となる病気がないのに起こる本態性高血圧で、食事、運動、ストレスなどが影響して起こると考えられています。

高血圧は、別名「サイレントキラ一(静かなる殺人者)」。

血圧が高くてもはっきりとした自覚症状はありませんが、そのまま放置しておくと動脈硬化を起こし、それが引き金となって脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、狭心症、心筋梗塞などのこわい合併症を超こすからです。

こうしたことから、定期的に血圧を測定することが何よりも大事になってきます。

何となく元気がない時は糖尿病の疑いも。

膵臓で作られるインスリンは、血糖(ブドウ糖)が上昇すると血中に分泌され、筋肉などの細胞がプドウ糖を利用する際に用いられます。糖尿病は、遺伝的な要因に、食べ過ぎや肥満、連動不足などが加わると、インスリンの効果が発揮しにくくなって起こる病気です。

糖尿病になると血中の血糖値が高いまま放置されることになり、体中の細胞の調子が崩れてきて、腎臓病や神経障害、動脈硬化などさまざまな合併症を引き起こします。尿が多くなる、お腹がすいて疲れやすい、いくら食べてもやせる、といった症状も出てきますが、これはかなり進行してからのことです。

糖尿病も、初期のころにはほとんど自覚症状はありません。なんとなく元気がない、よくお腹が空いてつい食べ過ぎる、といった兆候が出てきたら、一度糖尿病を疑ってみる必要があるかもしれません。

肝臓は「沈黙の臓器」と言われています。それは肝臓が、病変があっても症状がなかなか表に出てこないからです。

肝臓ガンが進行すると、体がだるい、お腹が痛い、お腹が張るといった症状が出てくることがありますが、これもはっきりとしたものではありません。

しかし、肝硬変、慢性肝炎といった肝疾患を持っている人や、長期にわたって大量に飲酒した人が、肝臓ガンになりやすいことは分かっています。

症状としてはっきりと出てきませんが、こうした肝臓の異常は検査値には現れてきます。