たくさんの細胞が集まってパワーアップした破骨細胞は、いよいよ裸になった骨の表面にUFOのように着陸するが、その際はファイブロネクチンなどの細胞ノリを出して骨に密着します。そして自分自身の骨と接している側から大型のブラシを出して骨を削り始めます。骨は硬いカルシウム結合物で出来ているのでブラシで擦っただけでは削れません。

そこで、ブラシの先端から酸を放出し、細胞ノリで骨と密着した狭い隙間を酸性の状態にしてしまうのです。骨などカルシウムの結合物は酸に溶けやすく、例えば卵の穀を酢につけて置くと溶けて柔らかくなったり、ワカサギのフライを酢につけてマリネにすると骨が軟らかくなって食べやすくなるのも、酸がカルシウムを溶かしているからです。

骨から溶け出したカルシウムは破骨細胞が吸い取り、それを血管の方に送り出します。

また、骨にはカルシウムだけではなくして、コラーゲンなどのタンパク質が豊富に存在しますが、このタンパク質は酸で容易に溶けないので、タンパク質を溶かす専用酵素がふりかけられ、その結果、タンパク質も溶け出して、破骨細胞の下の骨に大きなクボミができます。

破骨細胞は目がときには100個もある大型の細胞ですから、骨を造る骨芽細胞を軽自動車に例えますと、破骨細胞は大型のショベルカーかダンプカーのような大きさになります。この細胞が骨を削りながら移動しますと、その通ったあとは顕微鏡で観察できるほど大きなクボ地ができます。そして、この細胞が大活躍した人では、動脈にカルシウム粉塵が沈着している様子がレントゲン像で観察できることが多くあります。この点から、破骨細胞は暴れん坊と表現しましたが、破骨細胞にも苦手とするホルモンがあります。それはカルシトニンで、これが注がれると破骨細胞は骨を削るために広げていた細胞の裾やブラシを引っ込めて丸まり、おとなしくなってしまいます。この現象を観て、カルシトニンを薬として注射すれば骨が削られて行くのが止まり、骨粗鬆症の予防にも効果があるのではないかとの考えで、カルシトニン注射療法が確立したのです。