もし、血液中のカルシウムが除々に減る状況に陥った場合、喉仏の近くにある四つのアズキ大の副甲状腺が敏感にそれを感じ取り、副甲状腺ホルモンを分泌します。副甲状腺ホルモンが血液を通って骨の組織内にまで染み込んでくると、のしイカのように平らになっていた骨芽細胞が丸く縮むことが観察されています。丸くなれば骨の表面をすべて覆い切れなくなって裸になった骨の肌が露出しますが、ここに骨を溶かす暴れん坊の破骨細胞が着陸するのです。血液のカルシウム濃度が低くなった時に分泌される副甲状腺ホルモンの命合を、破骨細胞が直接受け取って作業を開始すれば、迅速に問題を解決できるはずであるが、破骨細胞には直答が許されず、あいだに骨芽細胞による合図が必要となります。

それは、昔から骨の中に在って骨を警護する身内の細胞である骨芽細胞と違って、破骨細胞は外から求たよそ者細胞なので、働くための合鍵を持たされていないことと、破骨細胞は体つきが大きく、働き出すと止まらないほど暴れん坊であることから、ホルモンが仕事を頼む相手を選ぶのに慎重になっているのかも知れません。

よそ者の破骨細胞が裸になった骨の表面に着陸する様子は、骨に住み着いている三種類の細胞のうち、骨細胞とその前身である骨芽細胞は骨のいたるところに常駐しているが、破骨細胞だけは仕事をする場所を探し出しては短期間駐留するパートタイム細胞であります。破骨細胞はもともと、仕事場を求めて血液の中をパトロールしている血液形成細胞のうちの、ある仲間が寄り集まって合体したものであります。

血液形成細胞には、一つ目の細胞やソバカスを持った細胞などいろいろありますが、これらの細胞のうちのどれが破骨細胞の先祖なのか、はっきり分かっていません。しかし、これら血液形成細胞のうちのある仲間が、骨芽細胞の呼びかけにより、裸になつた骨の表面に集まり、そこで通常は一つしか目を持っていない細胞同士が結合して数十個、時には100個近くの目を持つ巨大細胞となります。細胞が結合するさいに、先祖が同じ細胞同士が集まろうとして、お互いに手を出して仲間かどうかの確認をしあっているようです。