体内で働くリンパ球などの様子を知る検査です。

ウイルスや細菌など体にとって異物となるものを抗原と呼びますが、抗原の侵入に対して体は2つの免疫機能で自らを守っています。1つはマクロファージやリンパ球など白血球の仲間が抗原を直接攻撃し破壊するもので、細胞性免疫と呼ばれます。もう一つは抗原と特異的に結合する抗体(免疫グロブリン)と呼ばれるタンパク質を作って、血液やリンパ液中に放出するもので、こちらは体液性免疫と呼ばれます。

ガンやエイズなどでは、ガン細胞やHIV(エイズウイルス)との戦いにリンパ球がくたびれて、数が減り、活性も低下してくる場合が少なくありません。このようなとき、欠かせないのが細胞性免疫の検査で、白血球、特にリンパ球の機能やそのバランスを調べます。白血球は顆粒球(好中球・好酸球・好塩基球)、単球(組織に移行するとマクロファージに変わる)、リンパ球に分かれますが、このうちガン細胞やHIVのような強敵と戦うのはマクロファージとリンパ球です。マクロファージは相手が鉄の粒だろうとガン細胞だろうと、異物と見れば食べて分解する細胞で、標的を見定めて特異的に攻撃するわけでないため、マクロファージによる免疫は非特異的免疫(自然免疫)と呼ばれます。

これに対してリンパ球は、ガン細胞などの特定の標的を認識して攻撃を仕掛け、一端標的を認識すると何度でも攻撃するので、リンパ球による免疫を特異的免疫(獲得免疫)と呼んでいます。

リンパ球は白血球の約30%を占め、B細胞、T細胞、NK細胞に分かれます。このうちB細胞は抗体を作って放出する体液性免疫の主役です。また、NK細胞は、特異的免疫と非特異的免疫の中間的存在で、腸管粘膜などをパトロールしているガン細胞専門の殺し屋です。細胞性免疫の主役はT細胞と言うことができます。T細胞は骨髄で生まれた際、心臓の上部にある胸腺という小さな器官に送られ、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、サブレッサーT細胞など、働きの異なる細胞に分化します。キラーT細胞は、ガン細胞やウイルスの潜り込んだ細胞など、特定の抗原を持つ標的を殺しにかかります。ヘルパーT細胞は、B細胞やキラーT細胞を活性化し、標的を認識するのを助けて攻撃指令を出します。サブレッサーT細胞はヘルパーT細胞とは逆に、免疫機能が過剰になって体まで傷めつけることがないように監視している抑え役です。

細胞性免疫の検査では、B細胞、T細胞、NK細胞などの比率がどうなっているかと同時に、T細胞の中でもどの細胞がどんな比率で働いているかが重要な意味を持って来ます。T細胞は標的の抗原を認識するためのアンテナを表面に出していますので、あるタイプのアンテナだけに特異的に結合するモノクロナール抗体というものを用いて、T細胞の比率を調べることができます。

例えば、ヘルパーT細胞は、CD4というアンテナを、またサブレッサーT細胞とキラーT細胞はCD8というアンテナを出しています。そこで、CD4とCD8を認識する2種類のモノクロナール抗体を使えば、CD4/CD8の比率からT細胞による免疫機能がどのよう状態にあるかの指標が得られます。