ところで、植物を増やすには通常、種子をとってそれをまくのがいいのだが、植物の種子の数は限りがあるし種子を付ける時期があって、思ったときに栽培するわけにはいかないのが現状だ。そこで考案されたのが人工種子である。

人工種子とは植物細胞の成長点培養をして増やした小さな塊(カルス)を高分子物質のゼリー状カプセルに詰めたものだ。特長は自然にない改良品種の種子がすぐに作れ、保存性がよく、いつでも好きなときに好きな量だけ種子がまける。長所は細胞融合植物などもカルスの段階で種子にできるし、レタス用の種子を作ると1グラムのカルスから6ヶ月後には10万個、セロリでは1000万個、イネでは200万個もでき、無限大の種子の提供ができることである。短所は箱入り娘のようで、屋内で一度管理培養してからでないと直接土にまけないので、もう少し改良しなければならない。

このように植物の細胞培養技術、つまり組織培養技術によって、大量にクローン植物を栽培する方法が確立された。この方法で農業を行うのをバイオ農業といっている。ここでは、成長点細胞だけでなく花、葉、根などどこの細胞部分からでも苗にまで成長させられる。また、工場の中にコンピューターで管理されたバイオ農場を作り、人工水耕栽培と蛍光灯を使って短期間の無農薬栽培により出荷しているクレソン、サラダ菜、レタスなどの野菜工場やカーネーション、イチゴ、メロンなどの栽培品が知られている。これからはウイルスフリーの成長点細胞培養による大量のコピー植物生産によって、私たちの生活により多くの潤いが与えられ、食生活においてさらにより多くの美味しい植物が手に入るようになるに違いない。

ウイルスフリーの成長点細胞培養は、ウイルスフリーと言う健康食品として最も必要な条件を満たした野菜類を私たちの食卓に提供し、医食同源を証明するだろう。