骨で働く三種類の細胞のうち、破骨細胞は、活発な暴れん坊で、おまけに体つきが大きく目玉(核)がときには100個もあると言った具合に、恐ろしい細胞であります。この破骨細胞は、骨の表面に吸いついて骨を溶かしていますが、ところかまわず吸いついているわけではありません。骨が古くなったのでそろそろ造り変えようと狙いをつけた部分に働く場合と、血液中のカルシウムが薄くなった時に働く場合の、二つの場面で活躍するのが破骨細胞です。

骨は均一な白い石のような外観をしていますが、薄く切って顕微鏡で観察しますと、たくさんの孔があいていることが分かります。それを更に詳細に観察しますと、大きい孔の廻りに、より細かな断面ではゴマ粒のように見える細いトンネル(骨細胞)があいており、その中に骨細胞が潜んで居ます。大きい方の孔(ハバース管)については、全体としてどのような構造になっているのか、長い間分かりませんでした。

ところが、20年前頃に骨をカンナのような刃で薄く削る方法が開発されました。この方法により、骨を連続して薄く、横断する方向に何枚にも削り、それを重ねて観察することによって、孔の立体構造が把握できるようになったのです。この骨の横断標本を1000枚以上も観察しますと、大きい方の孔は何ミリか続いても、やがては壁に突き当たるという、ちょうど封筒のような構造をしていました。そして封筒の内面には、骨を造る骨芽細胞がのしイカのように平らになってお互いに体を盤ぎ、全体としては膜状になって骨の表面を覆っていることが判明しました。これは骨を造る細胞が仕事の出番を待つているといった状態です。