バイオハザードについて

原因が細菌やウイルスなどの微生物によって引き起こされる災害のことを生物災害としバイオハザードと呼んでいる。

バイオテクノロジーが進歩して、従来の常識では想定しなかったような災害が生じる可能性が出てきた。その代表が、遺伝子組み換えなどによって今まで存在しなかったような細菌やウイルスが作り出される場合である。

災害は、遺伝子組み換えなどを行っている研究所や大学の研究現場で起こることもあれば、新しい微生物が外界に放出されて起こる塌合もある。新しい生物を作るのだから当然大きな利益を期待するのだが、逆に思いもかけない大きな災害を引き起こすこともあり得るのである。

微生物は目で直接見ることはできない。感染などの被害が起きた時点ではもう遅いのである。しかも、微生物は増殖するというやっかいな特徴を持っている。自然界では生きられないような性質を持たせ、万一漏れても大丈夫なように保険を掛けることもあるが、突然変異などを起こして、繁殖することも考えておかなければならない。微生物が増殖するということは、工業的に利用する場合は都合よいのだが、災害をもたらすことになれば悪夢に転じてしまう。

バイオハザードを防止する第一歩は、扱う微生物を実験区域から外界へ出さないようにすることである。この考え方を物理的封じ込めという。これに対して、万一外界に漏れても自然環境下では増殖などできないようにしておくことは生物学的封じ込めと言える。

物理的封じ込めはP1からP4まで4つのレベルが設定されている。扱う微生物の危険度に応じてゆるやかなP1レベルの設備から最高度に危険な微生物を扱うP4レベルの設備を用いなけれは’ならない。

P1は通常の無菌操作キャビネットを用いる実験施設である。

P2は実験対象の微生物が外部に漏れないようにした安全キャビネットと実験に用いた器具類の滅菌に使うオートクレープや紫外線殺菌装置などを備えた施設である。排気は特殊なフィルターを通して行われる。

P3はP2にさらに更衣室とシャワールームなどが備えられている。また実験区域全体の気圧が外界よりも低く保たれている。これは万一外の区域と空気のやりとりがあるような事故が生じても、外界に実験室内の汚染された可能性のある空気などが流れ出さないようにするためである。

P4は最高度の施設で、P3プラス、機械類の遠隔操作などが必要とされる。インフルエンザウイルスなどはP2の設備でよいが、ラッサ熱、マールブルグ病、エボラ出血熱などの有効な治療法も予防ワクチンもないような危険なウイルスはP4レベルの設備で扱わなければならない。日本にはこのP4施設は筑波など2力所しかない。(※ 2014年現在はP4設備としては存在するものの、住民反対などからP4の運用は停止しP3での運用をしている。)

バイオハザードを事前に正確に評価することは非常に困難で、細菌やウイルスについても分かっていないことが多く、遺伝子組み換え技術で新しく作り出された微生物の振る舞いの影響予測は至難の業で、慎重な上にも慎重に物理的封じ込めと生物学的封じ込めを有効させるべきである。現在大規模なバイオハザードは起こらないという保証はない。