排便のときに痛みがあり、さらに出血したり、残便感などを伴う時は、一般に痔と呼ばれる肛門周辺部の病気が考えられます。

肛門には細い静脈が網の目のように張り巡らされて、静脈叢(じょうみゃくそう)を形成しています。この部分の静脈がうっ血して瘤のようになったのが、痔核(いぼ痔)です。

直腸静脈叢が膨らんだものを内痔核、肛門静脈叢が膨らんだものを外痔核といます。また、排便の時にいきみすぎると、内痔核が肛門から飛び出した状態になります。これが脱肛です。便秘の時にいきみすぎて、肛門が裂けた状態が裂肛(切れ痔)で、多くは出血を伴います。排便の時に痛みがあれば、すっきりと便を出すことができず、残便感を感じることも多くあります。肛門付近は不潔になりやすく、ちょっとした傷でも化膿するようになります。これによって膿瘍(のうよう)といわれる膿の塊ができますが、これが深くなってついには孔を作ると、痔瘻(穴痔)になります。

こうした痔の各症状は、便秘症の人に多く見られます。また肛門付近の血液循環が悪くなると、痔になる可能性が高くなります。ある調査によれば、日本人の約8割が何らかの痔の病気に悩んでいるという結果が出ています。このような症状で悩んでいるのであれば恥ずかしがらずに医者の診断を受けるべきです。

痔になると、よく出血するようになります。しかし肛門から出血があったとき、すべてを痔からの出血と決めつけてしまうのは危険です。大腸ガン、特に肛門に近い直腸ガンであれば、肛門から鮮血が出てくることがあるからです。大腸ガンの場合、このような出血とともに、便が細くなるといった症状が出てきますので、よく注意して下さい。