全ての細胞は体細胞、生殖細胞を問わず、常に二つの状態、すなわち成長と分裂の間を行き来しています。細胞は分裂後、ある信号が次の分裂を指令するまで成長を続けます。この過程は非常に正確に制御されているので、連続的に起こる成長と分裂のそれぞれにふさわしい時を選び、指揮している内在的な振り子、つまり或る種の精密な分子時計が存在すると学者達は長い間考えて来ました。

そう推測されてきたにもかかわらず、長い間、私たちはこの分子時計について何も知りませんでした。しかしこの神秘的な機構のあるものは、いくつかの研究プロジェクトによって明らかにされ始めており、現在では、この振り子がいくつかの分子で構成されていることが解り、その中のあるものは分離され、性質が決定されています。これらのうちから、いくつかのタンパク質が同定されました。それらには「P34cdc2」というややこしい名前のものや、サイクリンがあります。

分子時計は生物の生存にとってこのような基本的な役割を演じているので、非常に長い時間にわたる進化の過程でも変わらずに保たれてきました。事実、異なった生物種での分子時計に関係するタンパク質の研究からは驚くべき結論が導かれました。酵母から人間に至るまで、これらは非常によく似ていることがわかったのです。もちろん私たちにはさらに研究を進めなければならないことがあり、振り子の他の成分が発見されれば、分子時計のシステムがどのようにして動くか、もっとよくわかるようになるでしょう。