骨は生きているので骨折部の骨代謝による改造は継続し、数年後には骨折の痕跡すらなくなることがあります。痕跡消失は、皮膚や胃、血管を切って治った状況とは大いに異なる点です。皮膚などを切ると、やがて傷は閉じるが、治ったあと必ず搬痕が残ります。この搬痕=傷痕は、年月がたっとともに薄くなって行くことはあっても、生涯消えることはありません。しかし、骨折の傷あとは完全に消えてしまうのです。歳とともに、皮膚の傷痕のように搬痕や線維の固まりが体内にだんだんと蓄積していき、臓器の中は搬痕や線維ばかりが空間を埋めて、ホルモンを分泌する細胞の居場所が少なくなり、そして組織の弾力性も失われていくことなどが老化現象の原因だと言う考え方もあります。

この考え方では、体内で骨だけは完全に若返ることのできる組織であるとも言えます。もっと極端に考えれば、骨は体液といった海の中で、周りのカルシウム濃度や圧迫力の影響を受けながら独立して生きている臓器でもあります。従って、若い人の骨でも状況によっては高齢者と同じように弱くなり、高齢者の骨でも若い人の骨と変わらないほど強くなり得ます。

このことから体液中の骨は、海の中のサンゴのようであるとも考えられます。骨には、石のような外観をしているが生きている、傷ついて治ってしまう、体液の変化で案外ダメージを受けやすい、といった海の中でのサンゴとの共通点が多く見られます。