水を飲んでいて誤って気道に入ってしまったり、タバコの煙の刺激を受けたりすると、咳が出ます。このように、肺の中に異物が入らないように防ぎ止めるのが、咳の役目です。また、炎症によって気管にたまった分泌物(痰)を吐き出すのも、咳の役目となっています。人間が咳をした時、その空気のスピードは秒速160~220mにも達します。この猛烈な空気の流れで、人間の生命活動に関わる肺を防御しているのが咳なのです。

コホンコホンと、痰をともなわない乾いた咳が出ることがあります。これが、いわゆる空咳です。風邪が原因でこういう咳が出ることが多いのですが、場合によっては、のどや呼吸器系の病気のシグナルであるケースもあります。

のどの奥が何となくいがらっぽい、声がかすれると言った症状をともなって空咳が出る場合は、咽頭や喉頭の炎症が疑われます。耳鼻咽喉科で診察を受けることをすすめます。のどではなく、もっと奥の肺のほうから激しい空咳が出るような場合は、肺の中の肺胞の壁が硬くなる間質性肺炎という病気が考えられます。もっと進んで、肺が線維化して硬く厚くなる肺線維症という病気になると、体を動かしただけでも激しい咳が出るようになります。また、咳をしてはいけないと緊張したり、神経質になったりすると、かえって咳が出てしまうことがあります。心理的な要素が働いて、大脳が咳中枢を刺激するために起こると考えられます。1回咳すると、2キロカロリーのエネルギーが使われます。ですから、激しく咳込めばそれだけで体力を消耗することになります。空咳でも、気になる時はその原因を突き止めて、きちんと対処する必要があります。