多様性がこの宇宙を支配しています。不活性な物質から生命体まで、観測し得る現象から精緻な思考過程まで、アイデアから実在の製品まで、何であれ私たちが考えつくものすべての特色は、不均一性と多様性です。現在はっきりわかっているものだけで150万種、推定では3000万から1億種という膨大な生物種が地球上に分布しており、その各々が宇宙の進行表の具体的表現にほかありません。それは遺伝的多様性を如実に示しています。通行表が先に決まったものか、または私たちの目の前で時とともに発展して行くものか、いずれにせよ、現存生物は進化の選択肢を通した生命の多彩さと発展ぶりとを調和させつつまとめているのです。

ある生物種の個体の間ではDNAを比べてみると、興味をそそる事実がわかります。個々のDNAの間に違いが在るのです。例えば人間では個人個人の間で平均500塩基対について1ヶ所の違いが在り、それらはDNA分子に沿ってランダムに分布しています。これらの違いは突然変異(一つの塩基が他のものと入れ代わること。一つまたはそれ以上の塩基の欠失または挿入)、短いDNAの再配列(転位や再構成)などの結果であり、大部分が突然変異です。この変化はDNA鎖の全長にわたる標識遺伝マーカーと呼ばれています。このようなDNA配列の変動が起こるメカニズムは様々です。多くの化学物質、X線のような放射線、紫外線などは突然変異原です。

すべての多形性をともなって、遺伝子(遺伝形質)は生物の目に見える性質(表現形質)に表現されます。ある表現形質は一定の遺伝形質に対応しています。私たちはみなだいたい似通っていますが、遺伝的多形性が在るために、身長、体重、目、肌、毛の色などの身体的特徴、また性格的特徴、行動の特徴などにかなりの違いが在ります。端的に言えば、遺伝的多形性は多様性を生み、そのために人生を面白くしているのです。同じ人種(例えばギリシア人、ピグミー、日本人、ボルネオ人)での個人間の多形性や遗伝的変動の推定値は、異なった人種の個人の間の推定値と同等かわずかに低いだけであることを強調しておきたいと思います。したがって遺伝的な違いによってある一つの民族より後れていると考えることには根拠がなく、馬鹿げたことなのです。