タンパク質を分解するとアミノ酸になる。このことは、タンパク質がアミノ酸によってできていることを意味する。そのため生物にとってアミノ酸は栄養となるだけでなく、タンパク質の原料としても重要な意味を持っている。天然のタンパク質に含まれているアミノ酸の種類は25種類である。ところがヒドロキシプロリン・ヒドロキシリジン・ジョードチロシン・チロキシン・シスチンの5種類のアミノ酸は、残りの20種類のアミノから二次的に作られる。そのため生物にとって遺伝的に必要なアミノ酸は20種類である。動物性タンパク質の多く含まれるグリシン、タマゴや牛乳に多いトレオニン、植物性タンパク質の多いグルタミン酸、毛髪に多いシスチンなどの存在するものに特徴のあるアミノ酸もある。

バクテリアや植物は、空気中の炭酸ガス・水・窒素といった無機化合物からアミノ酸を作ることができる。ところが動物には無機化合物からアミノ酸を合成する能力がないので、アミノ酸を摂取しないとタンパク質を作ることができない。

人間が自分の体の中でタンパク質を作るために必要なアミノ酸のことを必須アミノ酸という。人間は必ずしも20種類のアミノ酸をすべて必要とするわけではない。人間にとって必須アミノ酸は、バリン・ロイシン・イソロイシン・フェニルアラニン・トリプトファン・メチオニン・リジン・ヒスチジンの8種類であるといわれている。昔はヒスチジンとアルギニンも必須アミノ酸とされていたが、非常にゆっくりであるが人間の体内で作られることが分かったので、現在では除外されている。こうしたことから、必須アミノをたくさん含んだタンパク質が朱養価の高いものとされる。必須アミノ酸は、動物性タンパク質には多く含まれるが、大豆を除く植物性タンパク質に含まれる量は少ない。

アミノ酸を化学的に定義すると、広義にはアミノ酸はアミノ基を持ったカルボン酸のことをいい、一般的にはアミノ基とカルボキシル基が同じ炭素と結合したα-アミノ酸のことをいう。一つのアミノ酸のカルボキシル基と別のアミノ酸のアミノ基から水が取れてできる化合物のことをジペプジドと呼んでいる。タンパク質というのは、たくさんのアミノ酸が、ペプチド結合と呼ばれる結合で繋がったポリペプチドのことである。

アミノ酸は構成する元素がまったく同じでも、その立体構造の違いによってL型とD型の2種類のアミノ酸に分けられ、お互いに鏡に映したような「光学異性体」と呼ばれる構造になっている。自然界にはL型のアミノ酸しか存在しないこともあって、すべての生物が利用しているアミノ酸はL型に限られている。

遺伝子に書かれた情報がどのようにしてアミノ酸の並び方を決めているのかというと、遺伝子であるDNAは、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)の4種類の塩基が並んでいる化学物質である。このA・T・C・Gの4文字が並んでいるDNAの三連続文字がアミノ酸を並べる暗号(コドン)になっている。例えばTTTはフェニルアラニン、CAGはグルタミン酸、GAAはアスパラギン酸、ACTはスレオニンという調子である。TTCAGGAAと並んだコドンがあれば、フェニルアラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸の三つのアミノ酸が並ぶことになる。こうしていろいろなアミノ酸が並ぶことで、ある特定のタンパク質が出来上がるのである。このDNAの塩基配列に書かれたコドンによって特定のアミノ酸が順序よく並び、その結果決まったタンパク質が作られるというメカニズムが、人間を始めとするすべての生物の遺伝機構の基本になっている。

この遺伝の基本的なメカニズムに異常が起こると、いろいろな病気が起きることになる。さらに人間の体内に摂取されたアミノ酸が代謝される過程で、何らかの異常が起きることがある。こうしたアミノ酸代謝異常によって起きる病気が、現在までに40種類ほど見つかっている。