血液型というのは、血球が持っている抗原の違いによって分類された血球の種類のことである。血液型というと、誰もが思い浮かべるABO血液型は、1901年にオーストリア生まれのランドシュタイナーによって発見された。

その後、MN型、Rh型、P式血液型などが次々に発見されてきた。その結果、今では約60種類240タイプの血液型が明らかにされている。

ABO血液型は遺伝する。そのため日本では、血液型性格判断という非科学的なものが流行している。いくら血液型が遺伝するといっても、人間の性格がABO血液型によって決まっていることなど絶対にありえないことである。

ABO血液型というのは、赤血球の表面に「A型」と「B型」と呼ばれる型物質を持っているかどうかで判定する。A型の人の赤血球の表面には「A型」があり、B型の人には「B型」、AB型の人は「A型」と「B型」の両方があり、O型の人は両方とも持っていないというだけのことである。赤血球の表面の存在する物質が人間の性格をコントロールするとは思えない。しかもABO血液型だけが性格と関係するというのでは虫がよすぎる。60種類240型の血液型があるのだから、すべての血液型を組み合わせると膨大な数になる。さらにバイオによるDNA組み換え技術で、人間の血液型の遺伝子を大腸菌に入れるという実験が行われている。A型になる遺伝子を入れられた大腸菌がA型タイプの性格になるとはとても思えない。

A B O血液型を始めとする血液型は二つの分野で重要な意味を持っている。一つは輸血の際に行う血液型検査であり、もう一つは個体識別への応用である。

輸血の時に、供給される血液のABO血液型と患者の血液型が適合しないと、いろいろな副作用が発生する。そのため輸血に使う血液と患者のABO血液型を用いて交差適合試験を行ってから輸血を行うのが当然とされている。さらに女性が妊娠した時に、母親と胎児の血液型が不適合だと、生まれてくる新生児が貧血と黄疸になり、最悪の時には死亡してしまうことがある。血液型の中でも、Rh型とABO型の不適合が問題になる。Rh型の場合には、Rh型マイナス(陰性)の母親からRh型プラス(陽性)の子供が生まれる時に問題が生ずる。Rh陽性の女性はD因子と呼ばれる物質を持っている。D因子を持ったRh陽性の胎児の血球がRh陰性の母親の血液中に混ざると、母親の血液中にはD因子に対する抗体が作られてしまう。このD因子に対する抗体が、胎盤を通じて胎児の血管に入ると、胎児の赤血球が壊されてしまい貧血になる。

もう一つのABO型の不適合では、O型の母親からA型、B型、AB型の新生児が生まれた時に異常が起きることが多い。ABO型の不適合では、妊娠中に胎児が胎盤の中で影響を受けることはない。誕生直後の早い時期に強い黄疸が発生するが、すぐに適切な治療をすれば、後遺症が残ることはない。Rh型の不適合では、胎児は子宮の中にいるときから影響を受ける。特に胎児が貧血になるので、発育に必要な酸素が不足してしまう。そのため子宮内での胎児の死亡や誕生直後の死亡も多く非常に危険である。

子宮内の胎児が貧血になった時の治療は輸血しかないが、医学の進歩によって、最近ではほとんどの胎児が助かるようになった。生まれた新生児の貧血と黄疸がひどい時には、すぐに交換輸血が行われる。交換輸血というのは、新生児の血液を抜き取って、適合した血液を輸血することである。この交換輸血の進歩によって多くの血液型不適合で生まれた新生児の命を救うことができるようになった。