ストレスというと、精神面への影響が中心であるように考えられて来ましたが、近年になってストレス性の胃潰瘍など、ストレスの身体への影響についても、ようやく理解されるようになって来ました。ストレスの概念を提唱したセリエ教授は、ストレスが身体へ及ぼす様々な影響について研究し、そのメカニズムを次のように説明しました。

セリエ教授は、生体が環境の変化や怪我など様々な剌激(ストレッサー)に直面すると、一連の個体防御反応(ストレス)が起こることを発見し、それを「汎適応症候群」と名付けました。

 

  1. 警告反応期
    ショック相
    生体が突然ストレスに直面すると、体温下降、低血圧、低血糖、アシドーシス(身体が硬くなる我態)、胃腸のびらん、出血などのショック症状が起こります。
    反ショック
    次にショックから立ち直る防御反応として、副腎皮質が肥大してステロイドホルモンが放出され、体温上昇、血圧・血糖値の上昇などの反応が起こり、生体はショックから回復しようとします。このころから胸腺とリンパ器官が萎縮するようになります。
  2. 抵抗期
    ストレスに対抗してホメオスターシス(生体恒常性)を錐持しようとする働きが生体にあるために、ストレッサーと生体の間でバランスがとれている時期で、ストレッサーに対する抵抗力が最も強い時期です。
  3. 疲憊期(ひはい)
    ストレッサーが強すぎたり、長く続くことによって、生体がそれ以上適応状態を維持できなくなると、抵抗期を通り越して破綻を来たし、病的な状態に陥ってしまいます。この時期には体温や血圧は再び下降し、胸腺やリンパ器官は萎縮し、副腎皮質も急激に萎縮していき、ついに副腎皮質機能不全という状態に陥って死に至ることになります。

セリエ教授は、これらの反応は主に内分泌系が中心となっていると考えました。先ず脳下垂体からACTH (副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンが分泌され、このACTHによって副腎皮質が刺激されてコーチゾールという副腎皮質ホルモンが分泌されるために起こることが分かったのです。

またアメリ力の生理学者のキャノンは、色々なストレスに対して、生物がどのような反応を示すかを調べたことで有名です。猫に痛みや飢え、恐れ、怒りなどの刺激を与えると、毛を逆立ててつま先立ちになりますが、その時には、瞳孔は開き、心拍は増加し、血圧と血糖も上昇していました。そして、これらの状態は、交感神経の反応の結果、副腎皮質からアドレナリンというホルモンが分泌されるためであると考え、交感神経と副腎皮質のつながりの重要性を指摘したのです。このようにストレスによって、精神面だけでなく様々な身体面への影響があるわけですからストレスの恐さをしっかり認識する必要があります。私達は、普段ストレスを受けても疲憊期にまで至らぬように何らかの対策が必要です。