骨はカルシウムの銀行の役目をしており、全身の血液中のカルシウムが不足すると預金を引き下ろして補おうとするので、あらかじめカルシウムの預金量を多くして置くことが大切とも言えます。また、預金を下ろしすぎると銀行破産、すなわち骨折を生じてしまいます。破産に近い伏態が骨粗鬆症で、最近の長寿社会では預金を下ろし続ける年月が長くなり、ついに底をついてしまう高齢者も多く出ています。

このホメオスタシスに一役買っているのが骨の中の細胞です。骨には、溶かす細胞(破骨細胞)と造る細胞(骨芽細胞)と居眠りしている細胞(骨細胞)との三種類があります。骨にはたくさんの孔があいていますが、その中でもとくに細いトンネル(骨細管)の中で通くにいる隣の細胞と長い手を繁ぎ合って居眠りしている骨細胞は、もとをただせば活発に働いていた骨芽細胞の隠居後の姿なのです。骨芽細胞は骨を造る細胞ですが、骨をせっせと造っているうちに気がついたら自分が造った骨の中に閉じ込められてしまって、無理やりに隠居に追い込まれてしまったのです。

骨の中の細いトンネル内で手を繁いでいる骨細胞は、お互いに繋いだ手を介して情報の交換をしていることは明らかなのですが、そのほかに何をしているのかは確たることは分かっていません。ただもともとこの細胞は骨を造る骨芽細胞であったが、引退して骨細胞に変わってからは本職の骨形成はやめて、退屈まぎれに時々、骨を削ったりもしているのではないかと考えられています。そう考える根拠は、まれに骨細胞を入れている細いトンネルが広くなっていて、居眠りをしているはずの骨細胞がトンネルを拡大したとしか考えられない現象が認められるからです。骨細胞が骨を削るとしてもわずかずつであり、骨を削るのが専門になったとは言えませんが、骨細胞の総数が多いので、その影響力は無視できないとの見方もあります。