土壌溶かす雨

1999年秋、山陰海岸に降った雨が強い酸性を示した。

近隣諸国の大気中に排出された硫酸や硝酸のような硫黄や窒素の酸化物のエアロゾルが、偏西風に乗ってやって来て、酸性雨となって降ったらしい。土壌が酸性化すると、土壌中のカルシウムやマグネシウムなどが少ななり、アルミニウムやマンガンが溶けやすくなる。

湖水に住む魚は、エラに水酸化アルミニウムが溜る被害を受ける。多くの植物もアルミニウムやマンガンの過剰に、つまリ酸性に耐えられない。しかし、マツ・ツツジ・アジサイのように耐酸性の高い植物もある。茶の木・アスパラガス・ベリー類もハーブ・香辛料植物もそうである。例えば茶園の土は、PH4前後の髙い酸性を示す。茶の木は、可溶性のアルミニウムやマンガンが過剰な環境に生育していることになる。ところが、茶葉のアルミニウム含量は、新葉で100ppm程度と耐酸性の低い普通の植物と変わらないが、古い葉で10,000から20,000ppmにもなる。根からアルミニウムを積極的に吸収しないが、入って来たアルミニウムを無害化してため込むからである。

 

アルミニウムが脳を侵す

ヒトについては、アルミニウムは便秘を起こす以外、格別な害はないものと見なされていた。しかし1970年代に入ると、アルミニウム塩は腸管から良く吸収され、脳・副甲状線・腎臓位に蓄積することが分かってきた。そうして次のような状況証拠から、アルミニウム過剰障害が心配されるようになった。

第一の状況証拠は、ウサギの脳内にアルミニウムを注射すると、紀伊半島南部やグアム島、ニューギニア西部で多発した筋萎縮性側索硬化症(中枢の運動神経が選択的に侵され、筋萎縮が徐々に進行する)の場合と同じような変化が脳の神経原繊維におこることである。この中年以後に発病する脳障害では、脳組織にアルミニウムが沈着する。

第二は、アルツハイマー型老人性痴呆では、萎縮した脳の神経繊維にアルミニウムが蓄積することである。

第三は、透折療法を受けている慢性腎不全患者の中に、痴呆症状と言語障害のある脳障害が多発した事である。この脳障害は,透折に水酸化アルミニウムを用いたり、アルミニウムの多い水を用いたために起こった。

この三つの証拠を突き合わせると、次の様な図式が成り立つ。

腎機能に障害があり、血液脳関門に異常がある場合(つまり老齢者)、過剰のアルミニウムを摂り続けると、脳内のアルミニウム濃度が異常に高くなる。その結果、神経細胞核にアルミウムが蓄積して核酸代謝が異常になり、脳障害に至る。

筋萎縮性側索硬化症が多発した地域の土壌と飲料水には、アルミニウム・マンガン含量が高く、カルシウム・マグネシウムが極端に少ないという共通点がある。

酸性雨は、土壌の酸性化を通じて、飲料水,食品のアルミニウム含量を高めているに違いない。このようにして増えたアルミニウムは、かなりの部分が調理水に溶けでる。茶葉に含まれているアルミニウムの1/3~1/4は茶に煎り出される。

 

容器や添加物にも危険が

食品に添加されている主なアルミニウム化合物はミョウバンである。

ベーキングパウダー・ケーキミックスなどに炭酸ガスを発生させるのに必要な酸性成分として用いられる、ナスの漬物に保色剤として最近では、ゆでタコの製造にも利用されている。食用色素のレーキもアルミニウム化合物である。製酸剤や緩衝剤として水酸化アルミニウムを加えた大衆薬も多い。調理器具や容器から溶け出るアルミニウムの量も無視できない。

酸性のジュースや飲料のアルミニウム含量は原料も高い。調理水が1ppmのフッ素を含む水をアルミニウムの製器具に入れて煮沸すると、アルミニウムが溶けだして200ppmにもなった報告もある。(日本の水道法によると飲料水は、0.8ppmを超えてはならない)

昔のご飯の真ん中に梅干し一つ置いた日の丸弁当、この弁当を見かけるとフタの真ん中が梅干しの酸で白くふくれ上って穴が開いてしまったアルミニウム製弁当箱を思い出すが、私たちは思いのほか大量のアルミニウムを摂取してきたようだ。